Forge の意味
Autodesk Forge が 2016 年 6 月に正式公開されてから大分時間が経過しましたが、Forge の主眼が デザイン データを「繋げて」運用するソリューション構築にある点に変わりありません。Web ブラウザがあれば、デザイン データを作成した CAD ソフトウェアの購入や一部専用ビューアのインストールも不要なのが Forge の1つの利点です。もちろん、CAD で作成した形状(ジオメトリ)以外のプロパティや属性、また、それらを利用するビジネス ロジックを簡単に関係者を共有出来るメリットを生み出すことが出来るわけです。これが、日本において、BIM、CIM の領域でForge が注目されている所以です。
現在では、生産性を向上させるという命題を維持したまま、どの業態でも深刻化しつつある人材不足にも備える必要があります。ICT(information and communication technology) 技術 の活用は言うまでもありません。政府主導で 働き方改革、ワークスタイル変革 が叫ばれる中、AI やロボットの導入も加速するはずです。更なる効率化を目指して近い将来実現するのは、常にインターネットに「繋がる」環境であるはずです。現に主要ベンダーが公開している音声認識、画像認識、マシンラーニングなどの API は、RESTful APIを使ってクラウドに「繋げて」処理されているのです。設計の段階で、リアルタイムに各種法令遵守のチェックなども可能になるかもしれません。
Forge の利用検討は、関係者、関連業者も含めた現在のワークフローを、「繋がる」環境へ移行させる最初の一歩となり得ます。紙図面の配布、閲覧をタブレットなどの電子デバイスに置き換えるだけでは意味を成しません。「繋げる」運用の検討が未来への投資となる時代です。その手助けとなるのが、Forge プラットフォームと内包する各種 API なのです。
それでは、現在の Forge プラットフォーム API にはどのようなものがあって、何が出来るのか、簡単にご紹介しましょう。
Forge のソリューション
現在、 Forge プラットフォーム API で提供されているのは、CAD で作成したデザイン ファイルを Forge ストレージ(Bucket)や A360 や Fusion 360 などのオートデスク クラウド サービスが利用するユーザ ストレージへアップロード/ダウンロードをしたり、削除や移動などのファイル操作したりする Data Management API(RESTful API)、ストレージにアップロードされたデザイン ファイルをストリーミング配信用や別のデザイン ファイル形式にファイル変換する Model Derivative API(RESTful API)、変換されたファイルを Web ブラウザにストリーミングで表示する Viewer(JavaScript ライブラリ)、ストレージへのアクセス認証/認可をサポートする OAuth API(RESTful API)です。
また、Beta 扱いながら、BIM 360 HQ のアカウント コントロールをサポートする BIM 360 API(RESTful API)があります。また、BIM 360 Team や BIM 360 Docs などが利用するユーザ ストレージ領域には、前述の Data Management API でアクセスすることが可能です。これらの Forge プラットフォーム API を利用することで、オートデスクのクラウド サービスと連携可能な独自アプリを開発したり、既存システムに統合することが出来るのです。
Forge プラットフォーム API には、この他にも、最大 1000 枚の撮影画像から 3D メッシュ、点群、オルソ画像を生成する Reality Capture API(RESTful API)が用意されています。 Reality Capture API は、 ReCap Photo と同じ演算エンジンを使用していて、生成されたテクスチャマップ付きの 3D メッシュ データは、Model Derivative API 変換して Viewer にストリーミング表示することが出来ます。
更に、クラウドで稼働する AutoCAD のコアプロセス(エンジン)に、ダイアログ ボックスなどのユーザ インタフェースを持たないカスタム アプリ(アドイン)をロードさせて実行することで、カスタムなバッチ処理を実現する Design Automation API も用意されています。
なお、現在の Forge で構築出来るソリューションは、基本的にオリジナルのデザイン データを表示したり、プロパティや属性を抽出して再利用するためのビューア ソリューションとなっています。Viewer のベースになっている three.js と併用することで、表示しているジオメトリを移動、回転、また、一部ポリゴンのテクスチャを変更するなどの変更(脚色)も可能ですが、Web ブラウザ上で加えた変更をオリジナルのデザイン データに反映することは出来ません。
ただし、前述の Design Automation API を併用することで、パラメータ値の変更など、一定程度の編集結果をクラウド上のバッチ処理を介在させてデザインデータに反映することも可能です。処理に少々時間が必要になりますが、今後、Design Automation API は Inventor と Revit のエンジン/アドインにも対応することが予定されているので、後工程で AutoCAD(DWG ファイル)、Inventor(RVT ファイル)、Revit(IPT、IAM、IDW ファイル)での編集や閲覧、検証が必要な場合には、Web ブラウザを利用する現場とのコミュニケーション改善とともにワークフローを統合することが可能です。
少し長くなりますが、今年の AU Germany で利用されたショーリール ビデオがありますのでご紹介しておきます。Forge のイメージから、Forge を使った IoT モニタ、デザイン データに基づいた流体解析結果の表示、BIM ダッシュボード、VR、AR への応用など、多様な利用例を把握していただくことが出来るはずです。
Forge 3.0
さて、現在の Forge が、データをどう見せるか、どう活用するかにフォーカスしたビューア ソリューションになることはご理解いただいたと思います。もちろん、これが Forge のすべてではりありません。Forge は、今後も拡張されていきます。
まずは、Design Automation API へのサポート エンジン(Inventor、Revit)の追加があります。続いて、Forge の未来 でもご紹介した、Web ブラウザ上で加えた変更をクラウド上にストリーミングで反映する HFDM、HFDM 環境を利用した Web ページを Visual Studio の Form エディタのように簡単に作成するためのフレームワーク、Forge IDX(Integrated end-to-end Development Experience)、クラウド上の通知をリアルタイムにおこなう Webhooks など、続々と新しい API やテクノロジが登場します。Forge は BIM/CIM だけのソリューションではありません。今後の Forge にもご期待ください。
By Toshiaki Isezaki
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