前回 に引き続き、AutoCAD 2017 や AutoCAD LT 2017 の新機能についてご紹介します。今回は、革新性 に関する内容です。
2D グラフィックス
AutoCAD 2017 と AutoCAD LT 2017 ともハードウェア アクセラレーションを利用することで、2D 表示の精度やパフォーマンスを向上させる改善が実施されています。ハードウェア アクセラレーションの設定をおこなう [グラフィックス パフォーマンス] ダイアログには、ステータスバー上のボタンからアクセスすることが出来ます。
AutoCAD LT には 3D 機能がないため、設定出来る項目に差がありますが、共通して、ハードウェア アクセラレーション自体のオン/オフと、「高品質ジオメトリ」、「スムーズライン表示」の両機能をオン/オフさせることが出来ます。
2017 バージョンでは、移動や複写などの編集コマンドや作図コマンドの実行中に、オブジェクトを選択後、位置や大きさなドラッグ状態で決定するまでの間でも、スムーズライン表示出来るようになりました。
旧バージョンでは、ハードウェア アクセラレーションが有効な状態でも、ドラッグ中のオブジェクトにスムーズライン表示は適用されませんでした。
また、ドッドを持つ線種と線の太さを個別にオブジェクトに適用した場合でも、点を均等に表示出来るようになりました。この状態は、オブジェクトの選択時でも有効なため、入り込んだ隠れ線なども明瞭に判別することが出来ます。
従来バージョンでは、ドット部分が丸みを帯びて表示されなかったため、同じ太さを持つ実線部分との間に差が出てしまったため、場合によっては、オブジェクトの判別がしにくかった場合がありました。
精緻な表示は、細かいハッチング パターン表示にも有効です。厳密に等間隔でパターンを表現することが可能になったため、図面全体を引き締まった印象が向上します。
従来バージョンでは、画面表示の状態によってパターン間隔が均等に見えない場合がありました。表示の改善に注力した 2017 バージョンと比較すると、その差は明瞭です。
ここまでご紹介してきた破線やドット線種の表示やハッチング パターンの表示は、従来、CPU 演算によって画面上に表示をおこなってきました。今回のバージョンでは、それらのグラフィック プロセッサ(GPU)によって演算させることで、初めて可能になった機能です。
なお、ハードウェア アクセラレーションが有効に設定されている場合でも、GPU のグラフィック メモリが 128 MB より少なかったり、2D グラフィック キャッシュのオン/オフを指定するシステム変数 2DRETAINMODE の値が 0 に設定されている場合には、これらの機能を利用できません。
さて、精緻な表示だけではなく、2017 バージョンではオブジェクトの適用された破線線種のスペース認識も向上しています。新設されたシステム変数 LTGAPSELECTION を 1 に設定すると、破線のスペース部分を認識してオブジェクトを選択したり、破線同士のスペース部分が交差している状態でも、正しく交点オブジェクト スナップしたりすることが出来るようになりました。なお、システム変数 LTGAPSELECTION の既定値は、従来の動作を踏襲するために 0 に設定されています。
ドラッグ時のアンチ エイリアス処理を除く機能をまとめましたので、次の動画をご確認ください。
3D グラフィックス
AutoCAD 2017 では、AutoCAD 製品に組み込まれている Customer Error Reporting によって収集された情報をもとに、3D 利用時のパフォーマンスを改善しています。このため、今回の改良作業でより安定性が向上し、大規模な 3D モデルをシェーディングやリアリスティックの3D 表示スタイルで表示した際のパフォーマンスも改善されているはずです。
これらの改善は、マウスのホイールボタンで操作する 3D オービット操作も含め、3DORBIT[3D オービット]、3DPAN[3D 画面移動]、3DSWIVEL[3D 旋回]、3DWALK[3D ウォーク]、3DFLY[3D フライスルー]、3DPAN[3D 画面移動]、3DCORBIT[3D 継続オービット]、ORBITAUTOTARGET ON および OFF、NAVVCUBE[ViewCube 切替]、NAVSWHEEL[SteeringWheels を表示]、PAN[画面移動]、ZOOM[ズーム] の各コマンドで体感していただけるはずです。
なお、新機能という訳ではありませんが、-GRAPHICSCONFIG[ハードウェア パフォーマンスの調整] コマンドを使ってフレームレートを調整することで、指定した最小許容速度(フレーム数/秒)を下回ったの際に、表示効果を適切にオフにすることで、軽快な操作が出来るようになります。[ワイヤフレーム] 表示スタイルを使っている場合には、表示されるベクトルの数が減ります。
新レンダラーへの移行
AutoCAD 2017 は、前バージョンで採用された 新しいレンダリング エンジン RapidRT への移行を完了したバージョンとなります。もちろん、フォトリアリスティックな静止画像生成では、AutoCAD 2016 も RaoitRT を利用していますが、ANIPATH[アニメーション パス] コマンドで作成する移動パスアニメーションには、それ以前の AutoCAD が利用していた NVIDIA mental ray® が適用されていました。このため、AutoCAD 2016 で作成したアニメーション動画には、RapitRT が提供する IBL イメージ(画像)を指定したシーンでも、背景や露出がアニメーションに反映することが出来ませんでした。
今回の AutoCAD 2017 では、移動パスアニメーション作成にも RapitRT を利用するようになったため、 IBL イメージ(画像)が持つ背景や露出を反映した、より臨場感のあるアニメーション動画が作成可能です。次に紹介する移動パス アニメーションは、AutoCAD 2017 で作成したものです。どちらもスプラインで作図されたパスに沿ってカメラを移動させています。
上記、左手の 3D モデルに 「プラザ」の IBL 照明を適用して作成した移動パスアニメーションが、次の動画です。
同様に、右手の 3D モデルに 「グリッドの光源」の IBL 照明を適用して作成した移動パスアニメーションが、次の動画です。
なお、AutoCAD 2016 でレンダリング エンジンを切り替えるために搭載されていたシステム変数 RENDERENGINE は、AutoCAD 2017 で廃止されています。
なお、AutoCAD 2017 の新機能 その1、その2、その3、その4 とご紹介してきたブログ記事とは別に AutoCAD 2017 プレビューガイドが用意されましたので、こちら からダウンロードしてご参照ください。
次の機会には、AutoCAD 2017 のカスタマイズの互換性についてご紹介します。
By Toshiaki Isezaki
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