前回に引き続き、AutoCAD 2017 や AutoCAD LT 2017 の新機能についてご紹介します。今回は、接続性 に関する内容です。
PDF インポート
AutoCAD 2010 で導入された機能に、PDF ファイル図面を AutoCAD で編集中の図面 にアタッチして、表示する PDF アンダーレイ という機能があります。アタッチした PDF ファイルは、通常の AutoCAD ジオメトリと同じように表示するでなく、作図の際に O スナップをさせて、PDF ファイル内の図形をトレースすることも出来ました。
ただ、PDF アンダーレイは、あくまで外部参照として AutoCAD 図面に貼り付けられた「下敷き」のような存在なので、PDF ファイル内の図形を直接 AutoCAD のコマンドで編集することは出来ませんでした。
AutoCAD 2017/AutoCAD LT 2017 では、PDF アンダーレイとは別に、PDF ファイル内の図形を AutoCAD ジオメトリに変換する機能が加わりました。すでに PDF アンダーレイとして PDF 図面が貼り付けられている場合には、AutoCAD ジオメトリに変換したい領域を指定して、AutoCAD ジオメトリ化することが出来ます。配置されている PDF アンダーレイを選択すると、 [PDF アンダーレイ] コンテキスト リボン タブが表示されて、[オブジェクトとして読み込む] ボタンが表示されます。PDF アンダーレイ上で変換したい領域を指定すると、領域内だけをジオメトリに変換することが出来るようになっています。
変換対象領域の指定時には、[PDF 読み込み設定] ダイアログを呼び出して、変換時のオプション設定を変更することが出来るようになっています。
[挿入] リボンタブの [読み込み] リボンパネルからアクセス可能な PDFIMPORT[PDF 読み込み] コマンドを実行すると、初めから PDF ファイル全体を AutoCAD ジオメトリに変換することも出来ます。なお、従来から存在する IMPORT[読み込み] コマンドも PDF ファイルをインポート指定出来るように同時に拡張されています。
PDF ファイルの読み込み時には、[PDF を読み込む] ダイアログから、変換時のオプション設定と同時に、読み込み対象のレイアウトを指定することもが能です。
PDF 内の文字が TrueType フォントで記入されていて、オプション設定時に「TrueType 文字」にチェックをしていれば、文字の状態を維持したまま AutoCAD ジオメトリ化するので、マルチ テキスト エディタで直接文字編集出来るようになります。残念ながら、シェイプ フォントで記入された文字は、ポリラインなどのジオメトリに変換されてしまいます。同様に、PDF 内に画像が貼り付けられている場合には、「ラスター イメージ」にチェックすることで、ラスター イメージ オブジェクトに変換した画像を図面に表示出来ます。変換されたラスター イメージ オブジェクトは、AutoCAD でアタッチした画像と同じように外部参照として扱われます。
ここまで内容を動画にしていますので、内容を確認してみてください。
コーディネーション モデル
AutoCAD 2016 で登場した BIM アンダーレイ では、Navisworks ファイルや BIM 360 Glue モデルをアンダーレイとして読み込むことで、コーディネーション モデルの検討や調整を AutoCAD 上でおこなうことが出来ました。ただ、Navisworks ファイル内のモデルに合わせて AutoCAD 上で 3D モデルの作図や編集をする場合、Navisworks のモデルへ オブジェクト スナップさせることが出来ませんでした。
この部分を改善して、AutoCAD 2017 では、アタッチされた Navisworks ファイル内のオブジェクトに対して、端点と中心にオブジェクト スナップさせることが出来るようになりました。なお、有効なオブジェクト スナップ設定は、3D オブジェクト スナップ ではなく、2D 作図で使用する オブジェクト スナップ となりますので、この点は注意が必要です。
なお、この機能は、3D 機能のない AutoCAD LT 2017 では利用できません。
A360 ライブレビュー
[A360] タブの [デザイン ビューを共有] ボタンに実装された ONLINEDESIGNSHARE[オンライン設計共有] コマンドを使うと、Live Review(ライブ レビュー) を使ったリアルタイム コラボレーションの機能が、AutoCAD 2017 や AutoCAD LT 2017 から簡単に実行出来るようになりました。A360 Drive を使った同期処理の手順を経なくても、即座に遠隔地の関係者と図面や 3D モデルを共有、表示領域を同期させながら打ち合わせをおこなうことが可能です。タブレットやスマートフォンとともに活用すれば、紙に図面を印刷して現場の持ち出す手間を省けます。
操作内容を動画にしていますので 、手順とともにご確認ください。
3D プリント
従来の AutoCAD では、AutoCAD 上の 3D モデルを 3D プリントするために、STL ファイル化する機能が備わっていました。この場合、作成された STL ファイルの内容を直接編集することが出来なかったため、出力された STL ファイルにメッシュの破れが存在しても、AutoCAD 側で直接目視して確認したり、修正したりすることが困難でした。
AutoCAD 2017 では、こういった作業 AutoCAD のコンパニオン アプリケーションとして動作する Print Studio で実施出来るようになっています。Print Studio は、AutoCAD インストーラには含まれていませんが、AutoCAD のインストール後に初めて 3DPRINT[3Dプリント] コマンドを実行することで、次のダイアログから無償ダウンロードしてインストールすることが出来ます。なお、ここにも記載されているとおり、32 ビット版の AutoCAD 2017 では、Print Studio を利用することは出来ません。
3DPRINT コマンドは、[出力] リボンタブの [3D プリント] リボンパネルからアクセスすることが出来ます。
Print Studio 上ではあらかじめ用意された 3D プリンタのプリセットに合わせて、AutoCAD かた出力された STL ファイルをスケーリングして配置後に、メッシュの破れを検出して修正したり、不安定な厚みのオブジェクトを支えるサポートを自動生成することが可能です。また、出力されたモデルに一定の強度が出るよう、内側の部分にインナーサポートを生成させる機能も持っています。これらの機能により、従来よりも確実な 3D プリントを実現できます。
ここまでの流れを動画にしていますので、手順や機能をご覧ください。なお、この機能は、3D 機能のない AutoCAD LT 2017 では利用できません。
AutoCAD 360 Mobile Pro
AutoCAD 2017、AutoCAD LT 2017 をサブスクリプションされている方には、有償契約が必要な AutoCAD 360 Mobile Pro の使用権利がお使いの Autodesk ID に付与されます。もともと、AutoCAD 360 は Web 版と Mobile 版の 2 つの利用方法がありますが、Web 版は Beta 扱いで、以前、ご案内したとおり、現在、メインテナンス状態になっています。ここでお使いいただけるのは、作図や編集機能を備えた AutoCAD 360 Mobile Pro アプリです。
現在の機能詳細については、AutoCAD 360 Pro ページでご紹介していますのでご確認ください。
なお、従来、無償でお使いいただいていた AutoCAD 360 Mobile アプリの機能に変更が加えられていますのでご注意ください。
ReCap 360
昨年の AutoCAD 2016 では、AutoCAD に同梱されていた無償版の ReCap は、ReCap 2016 という名称で有償版の ReCap 360 とは製品自体が異なっていました。このため、ReCap 2016 からサブスクリプションして ReCap 360 にアップグレードすることが出来なかったため、有償版の ReCap 360 を別途、新規にサブスクリプション契約して入手する必要がりました。
AutoCAD 2017 では、製品インストーラに同梱される無償版の製品名が ReCap 360 となり、同じ製品からサブスクリプションすることで、ロックされた機能が利用できるようになります。この状態の有償版の名称は、ReCap 360 Pro として区別しています。
次回 は、革新性 についてご紹介します。
By Toshiaki Isezaki
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