このブログでは、既にいくつかの A360 Web サービス API をいくつか紹介していますが、データをアップロードして保存するストレージ領域について、誤解が生じやすいように思います。今回は、A360 配下のサービスが利用するストレージ領域と、View and Data API が利用するストレージ領域に注目しながら、クラウドを説明する際に使われる一般的な用語を使って、A360 の考え方や違いを説明したいと思います。
A360 を構成する SaaS、PaaS、IaaS
オートデスクが提供する A360 クラウド サービスは、SaaS(Software As A Service) にあたるもので、Web ブラウザやオートデスクが用意したモバイル アプリケーションから利用することになります。ここでは、SaaS を、エンド ユーザが利用する最終成果物と考えることが出来ます。
一方、View and Data API を利用する開発者は、オートデスクの SaaS がおこなっているのと同じように PaaS を利用することになります。つまり、開発者は、独自の SaaS を作成するために PaaS を利用します。開発者は、PaaS で利用可能な、表示、検索などの機能を API を介して利用することで(プログラムすることで)、独自の SaaS を作成することが出来ます。
また、オートデスクが提供する A360 SaaS や PaaS は、Amazon Web Services のインフラ上に構築されています。別の言い方をするなら、A360 は Amazon Web Services を IaaS として利用しています。
A360 の SaaS、PaaS、IaaS が利用するストレージ領域
A360 SaaS では、図面ファイルや 3D モデルを含まれるファイルを A360(http://autodek360.com) にアップロードして、表示・検索 等で利用することになります。また、その他のサービス、例えば、AutoCAD 360(http://www.autocad360.com)や ReCap 360(http://recap360.autodesk.com)、Fusion 360 で作成した 3D モデルなどでも、同じアカウントでログインしていれば、他のサービスで作成したファイルを A360 側でも直接確認することが出来ます。アカウント毎にストレージ領域を共有利用することで、シームレスな運用が可能になり、利便性が高めるために実装されている機能です。
View and Data API でも、もちろん、データ ファイルをアップロードしてストリーミング配信するためにストレージを利用します。ところが、PaaS を利用する開発者は、A360 SaaS が利用するアカウント(Autodesk ID)を認識したり、アカウント情報にアクセスすることが出来ません。このため、開発者に割り当てられた Consumer Secret と Consumer Key を利用して、OAuth 仕様に基づいたアクセス許可を得ることでストレージにアクセスします。なお、API がアクセス可能なストレージ領域は、API 用途に用意された専用領域に限定されています。API 用のストレージ領域では、バケット名(Bucket)で一意に識別した場所を用意することで、他の開発者がアップロードするファイルとの競合を防止する仕組みを導入しています。
IaaS として見た場合、利用されているストレージは、Amazon S3 です。A360 SaaS を利用するエンドユーザや、PaaS を利用する開発者は、S3 ストレージを意識することはありません。
まとめ
簡単な説明ですが、ここまでの内容をまとめると、次のようになります。
- View and Data API は、A360 のユーザ アカウント(Autodesk ID でログイン)が利用するストレージ領域を利用することは出来ません。
- ユーザ アカウント(Autodesk ID)で A360 へログインしても、View and Data API でアップロードしたファイルを確認することは出来ません。
- SaaS が利用するストレージ領域と、PaaS が利用する領域は、別物と考えることが出来ます。
現在のところ、SaaS ストレージにデータ ファイルをアップロードしたり、SaaS ストレージにアップロードされたファイルを表示、操作する API は存在していません。
<注意>:2016年6月に Forge DevCon で発表された Data Management API を利用することで、A360 や Fusion 360 のユーザ領域にアクセスする機能が提供されました。
By Toshiaki Isezaki
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