Windows XP のサポート切れにともなって、AutoCAD 2014 へのアップグレードを計画されている方が多いようです。その際に、現在お使いの AutoCAD バージョンから、最新の AutoCAD 2014 までの間に、そのような機能が追加されたのか、具体的に知りたいという要望が寄せられるようになっています。そこで、数回に渡って、AutoCAD 2010 から AutoCAD 2013 の各バージョンで追加や改善された新機能を、動画も含めて記載しておきたいと思います。
今回は、AutoCAD 2011 での機能についてダイジェストで紹介していきます。
詳細は、下記の AutoCAD 2011 概説書(プレビュー ガイド)をご参照いただければと思います。
生産性向上ツール
AutoCAD 2011 には、2D、3D の両環境で利用できる便利で作図生産性を向上させる機能が追加されています。
オブジェクトの表示/非表示
AutoCAD 2011 には、画層の表示/非表示とは別に、オブジェクトの表示/非表示をコントロールできる新しいツールが含まれています。オブジェクト表示/非表示ツールには、オブジェクトの選択状態にかかわらず、右クリック メニューからアクセスできます。[オブジェクトを選択表示]ツールを使用すると、選択したオブジェクトのみが図面に表示されるようになります。他のオブジェクトは、すべて非表示になります。
一方、[オブジェクトを非表示]ツールを使用すると、選択したオブジェクトが非表示になります。[オブジェクトを選択表示]ツールと[オブジェクトを非表示]ツールを組み合わせて使用することで、現在の作業に関係するオブジェクトのみを効率的に表示することができます。たとえば、図面の編集する領域を[オブジェクトを選択表示]ツールで選択し、次に[オブジェクトを非表示]ツールを使用して、その領域内の余計なオブジェクトを非表示にすることができます。作業を終えたら、[オブジェクトの選択表示を終了]ツールを使用して、非表示のオブジェクトを元の表示にすばやく戻すことができます。
オブジェクト選択
新しい[類似オブジェクトを選択]ツールを使用すると、1 つのオブジェクトを選択するだけで、同じ種類の他のすべてのオブジェクト、および同じプロパティを持つ他のすべてのオブジェクトを、新しい選択セットに自動的に含めることができます。このツールには、オブジェクトを選択時に右クリック メニューからアクセスできます。フィルタに使用するプロパティを指定するには、[設定(SE)]オプション(アクセスするにはコマンド ラインに SELECTSIMILAR と入力)を使用します。たとえば、[画層]プロパティのみを有効にして円を選択すると、選択した円と同じ画層上のすべての円が自動的に選択されます。しかし、[画層]と[線種]プロパティを有効にすると、選択した円と同じ画層上で同じ線種の円のみが選択されます。
推測拘束
AutoCAD 2011 では、2D ジオメトリへの幾何拘束の適用作業が極めて容易になりました。AutoCAD は、ジオメトリが作成および修正されると同時に、幾何拘束を推測して追加することができます。ステータス バーの新しい[推測拘束]ボタンを使用して、オブジェクト スナップのオンとオフを切り替えるように、推測拘束のオンとオフを切り替えることができます。この切り替えは、[拘束設定]ダイアログ ボックスの[幾何拘束]タブで行うこともできます。
推測拘束を使用すると、[端点]、[中点]、[中心]、[点]、[挿入基点]オブジェクト スナップに対して、一致拘束が自動的に適用されます。たとえば、中心を線分の中点にスナップさせて円を描くと、円の中心と線分の中点の間に一致拘束が自動的に適用されます。その結果、円を移動すると、線分も一緒に移動するようになります。この強力な機能は、編集コマンドにも適用されます。たとえば、ブロックの挿入基点を線分の端点にスナップさせて複写すると、それら 2 つの点の間に一致拘束が自動的に適用されます。線分を移動しても、ブロックは線分の端点に位置し続けます。
ハッチングとグラデーション
ハッチング オブジェクトの作成と編集をすばやく行えるように、AutoCAD 2011 ではハッチング ツールが効率化されました。ハッチング ダイアログ ボックスは表示されず、内側の点をクリックするように求めるプロンプトが直ちに表示されるようになりました。ダイアログ ボックスの代わりに、[ハッチング作成]コンテキスト タブから、ハッチングとグラデーションのすべてのオプションに簡単にアクセスできます。また、既存のハッチングを選択すると、ハッチング作成ツールと同じような[ハッチング エディタ]コンテキスト タブが表示されます。
「点をクリック」 を利用した場合のハッチング プレビュー機能が改良、強化されました。適切な領域の上にカーソルを移動するだけで、その場所をクリックした場合と同様のハッチングが表示されるようになりました。また、図面内で点またはオブジェクトを指定するとき、クリックするたびに結果を確認することができます。クリックしたときにハッチングが作成されたように見えますが、[独立したハッチングを作成]オプションをオンにしない限り、実際のハッチングは独立したオブジェクトにはならない点に注意してください。
AutoCAD 2011 では、ハッチング オブジェクトを直接操作するために、新しい中心グリップでオブジェクト グリップ機能が拡張されています。直接操作を使用して、ハッチングをストレッチまたは移動したり、原点、角度、尺度を変更することができます。これらのオプションは、中心グリップにカーソルを重ねるだけで使用できます。リストからオプションを選択するか、グリップを選択して[Ctrl]を押すことにより、別の動作に切り替えることができます。ハッチングは、線の色に加えて背景色をサポートするようになりました。これにより、1 つのオブジェクト内で重ね塗りしたハッチングの効果を得ることができます。
ポリライン
AutoCAD 2011 では、ポリライン オブジェクトに特別なグリップが導入され、従来以上にポリラインの編集が簡単になりました。各ポリライン セグメントの端に表示される従来の主グリップに加え、各セグメントの中点に表示される 第 2 グリップが追加されました。ハッチングの新しいグリップと同様に、これらのグリップは多機能です。グリップにカーソルを重ねると使用可能な機能が表示され、表示されたメニューからオプションを直接選択できます。
サーフェス モデリング
3D ソリッドおよびメッシュ オブジェクトに加え AutoCAD 2011 には、異なる 2 種類のサーフェス タイプ、プロシージャと NURBS(non-uniform rational b-spline: 不均一有理 B-スプライン)が用意されています。プロシージャ サーフェスは、自動調整で履歴があります。NURBS は、自動調整ではなく履歴はありません。代わりに NURBS には制御点があり、それを使用して現実の操作に近い方法でモデリングすることができます。プロシージャ サーフェスを使用して自動調整モデリングの長所を利用したり、NURBS サーフェスを使用して制御点によるモデリングの長所を利用することができます。サーフェス モデリングの一般的な手順は次のとおりです。
- 3D ソリッド、サーフェス、メッシュ オブジェクトが混在したモデルを作成します。
- 自動調整モデリングの長所を利用するために、モデルをプロシージャ サーフェスに変換します。
- NURBS 編集の長所を利用するために、CONVTONURBS[NURBS 変換]コマンドを使用して、プロシージャ サーフェスを NURBS モデルに変換します。
- サーフェス解析ツールを使用して、欠陥やしわがないかを調べます。
- 必要に応じて、スムーズ化を復元するために、CVREBUILD[制御点再生成]コマンドを使用してサーフェスを再生成します。
リボンの新しい[サーフェス]タブから、サーフェス モデリング ツールに簡単にアクセスできます。
次回はAutoCAD 2012 で新機能だった内容についてご案内します。
By Toshiaki Isezaki
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