今日はネットワーク ライセンスで利用することが出来る カスケーディング ライセンスについて、その基本的な考え方について紹介していきましょう。カスケーディング ライセンスは、Suite 製品に含まれる製品を効率的に使用する目的で導入されたライセンスの取得方法です。カスケーディング ライセンスの前提となっているのは、ライセンス マネージャ上で複数製品のライセンスを管理するためにおこなう ライセンス結合 と呼ばれる作業です。
実際のカスケーディング ライセンスに話を移す前に、簡単にライセンス結合について説明しておきます。ここでは、シングル サーバー構成で AutoCAD 2014 を 1 ライセンス管理していたと仮定しましょう(実際には 1 ライセンスはあり得ませんが)。そこへ、AutoCAD Design Suite 2014 Premium エディションをネットワーク ライセンスで購入して、同じライセンス マネージャで管理する場合を考えてみます。ネットワーク ライセンスでは、サーバー上のライセンス マネージャが管理しているのはライセンス ファイルと呼ばれるファイルです。最初に管理していた AutoCAD 2014 のライセンス ファイルには、次のような情報が書き込まれています。
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そこへ同じライセンス マネージャで AutoCAD Design Suite 2014 ライセンスを管理すべく、同じマシン名と MAC アドレス(物理アドレス)でオートデスクに依頼してライセンス ファイル発行を依頼して入手したとします。その際のライセンス ファイルは次のようになります。
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2つのライセンス ファイルで太字で示したのが、個々の製品を示す フィーチャ コード と呼ばれるコードです。そして、この 2 つのライセンス ファイルを正しく結合したものが次のライセンス ファイルです。
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これで、2 つの製品を 1 つのライセンス マネージャで管理することが出来るようになりました。それでは、実施の動きを見てみましょう。AutoCAD Design Suite 2014 Premium エディションには、AutoCAD、Showcase、Raster Design、Mudbox、SketchBook Designer、3ds Max Design の 6 つの製品が同梱されています。
ライセンス マネージャがインストールされているサーバー コンピュータには、3 つのクライアント コンピュータがネットワークで接続されていて、3 台ともに AutoCAD Design Suite 2014 Premium エディションがインストールされていると仮定します。
- 1 台目のコンピュータで AutoCAD 2014 を起動すると、ライセンス マネージャがプールするライセンスから、最初に AutoCAD 2014 のライセンスが消費されます。
- 次に、2 台めのコンピュータで AutoCAD 2014 を実行すると、AutoCAD 2014 のライセンスは既に消費されているため、AutoCAD Design Suite 2014 のライセンスを使って AutoCAD 2014 が起動します。
- 続いて、3 台めのコンピュータで 3ds Max Design を起動しようとすると、AutoCAD Design Suite のライセンスは既に消費されているため、3ds Max Design を起動することは出来ません。
- 2 台めのコンピュータが AutoCAD 2014 をシャットダウンすると、AutoCAD Design Suite 2014 のライセンスが返却されて、3 台めの 3ds Max Design を起動できるようになります。
非常に単純な例ですが、これが基本的なカスケーディング ライセンスの考え方です。AutoCAD 2014 を起動する際に、単体の AutoCAD 2014 のライセンスから利用されているため、AutoCAD Design Suite 内に含まれる製品の利用率を高めることが出来ます。逆に AutoCAD 2014 を起動した際にAutoCAD Design Suite ライセンスから消費してしまうと、3ds Max Design などの製品利用率が下がってしまうことになります。
カスケーディング ライセンスの消費順序は、あらかじめオートデスクによって決められています。バージョンによって Suite 製品の構成が変化していることもあり、バージョン毎に順序が異なる場合があります。正確な情報は、次の Autodesk Knowledge Network を参照してみてください。
ADLM: Suite製品に含まれるすべての製品についてライセンスのカスケーディング機能はサポートされますか ?
カスケーディング ライセンスでは、基本的に価格帯の高い製品のライセンスを、最後に利用するように設計されています。ここでご紹介した AutoCAD 2014 と AutoCAD Design Suite 2014 Premium エディションの場合には、AutoCAD 2014 単体製品のほうが安価であるため、最初にライセンスが利用されるようになっているわけです。
さて、このトピックでは、最新バージョンである AutoCAD 2014 と AutoCAD Design Suite 2014 のライセンス結合時の動きを説明しましたが、実際にはもう少し複雑な利用環境が存在します。それが、Subscription 契約特典である過去3バージョンの使用権限を提供するパッケージ ライセンスを利用した際の問題です。これについては、別の機会に詳しくご紹介したいと思います。
By Toshiaki Isezaki
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