AutoCAD WS クラウドサービスが生まれ変わり、AutoCAD 360 として公開されました。
といっても、単純な名称変更だけでなく、従来のアップデートとは異なる大きな指針が示される重要なアップデートでもあります。今日は、CAD サービスとしての新機能とともに、新しく導入された仕組みについて、その概要ご紹介したいと思います。
まずは、AutoCAD WS の簡単におさらいです。AutoCAD WS がサービス提供を開始したのは、2010年9月でした。当初は、Web ブラウザを使った英語のユーザ インタフェースでのみサービスを提供していましたが、その後、Apple iOS で利用できるモバイル アプリケーションの登場を経て、ユーザ インタフェースの日本語化や Google Android 版を導入してきました。いずれも、Autodesk ID を取得していただくことで、無償で、どなたにでもお使いいただける CAD サービスです。
さて、AutoCAD 360 になっても、アクセスする方法は基本的に従来と変わりありません。AutoCAD や AutoCAD LT などのデスクトップ製品から、Web ブラウザから、専用のモバイル アプリケーションからの3つです。説明を分かり易くするために、ここでは、Web ブラウザからのアクセスを AutoCAD 360 Web、モバイル アプリケーションからのアクセスを AutoCAD 360 Mobile と表現することにします。
今回、新しいオートデスク ロゴや、他の Autodesk 360 クラウド サービスとのブランド統一を目的に、AutoCAD WS を AutoCAD 360 に改名しています。そして、AutoCAD 360 も、引き続き、無償でお使いいただくことが可能です。
AutoCAD 360 Web
AutoCAD 360 Web の最も大きな変更点は、AutoCAD WS Web で図面の表示やユーザ インタフェースの表示に使われてきた Adobe Flash Player を改め、HTML5 を全面的に採用した点です。HTML5 が Web の世界で標準化されつつあるのは、過去のブログ記事 でも紹介してきたと思います。
HTML5 の採用にともなって、いままでのユーザ インタフェースも一新されています。大分大きく変わったしまったので、驚かれる方もいらっしゃるかと思いますが、まずは、実際にお試しいただくことをお勧めします。
AutoCAD 360 Web では、いままで AutoCAD WS Web をお使いの方向けに、当面の間、従来の Adobe Flash Player を使ったページも平行してご提供していきます。AutoCAD WS Web に移動するためには、Home 画面上部の [autocadws.com にアクセス] をクリックしてください。
なお、2013年5月21日(US 時間)以降に新しく Autodesk ID を作成された方は、新しい HTML5 ベースのページを表示するようになっていますのでご注意ください。操作性のフィードバックも調査する必要があるので、AutoCAD 360 Web には、しばらく、Beta の冠をつけて提供されます。
AutoCAD 360 Web には、従来のhttp://www.autocadws.com の他に、http://www.autocad360.com からもアクセスすることができます。
AutoCAD 360 Mobile
AutoCAD WS は、定期的に新機能は既存機能の改良を施してきました。今回のアップデートでも、いくつかの改良が施されています。代表的な改良に、モバイル ユーザにとってうれしい存在となりそうな「スマートペン」の機能があります。スマートペンは、指でなぞったタッチパネル上のジェスチャの軌跡を、AutoCAD の図形に自動変換する機能を提供します。ジェスチャの最中には、既存の図形にオブジェクト スナップを利用できるので、モバイルの活躍の場である施工などの現場で、簡単に精緻な作図をおこなうことができます。
この他にも、いままで Web 版の AutoCAD WS からしか設定できなかった外部ストレージ接続が、Mobile 版の AutoCAD 360 からおこなえるようになったり、AutoCAD 2014 で指定した地理的位置情報 を持つ図面を使って、モバイルの GPS 機能を使った現在地の反映などもサポートされるようになっています。
AutoCAD 360 Mobile Pro
今回の最も大きなニュースが、この AutoCAD 360 Pro です。先に触れたとおり、今後とも AutoCAD 360 は無償で提供されることが決まっています。ただ、AutoCAD WS の時代から、多くのお客様から沢山のご要望をいただていたのも事実です。そこで、今回、この CAD サービス始まって依頼、はじめて有償化サービスに踏み切りました。それが AutoCAD 360 Pro です。
本来であれば、今回の Pro エディションには AutoCAD 360 Web も含まれるはずでしたが、AutoCAD WS Web からの移行期間も踏まえて、AutoCAD 360 Mobile のみで Pro エディションを提供することになっています。
さて、気になる AutoCAD 360 Mobile Pro の機能ですが、無償の AutoCAD 360 Mobile の機能に加えて、次のような機能を利用することができます。
AutoCAD 360 Pro は、契約プランによって Pro と Pro Plus に分けられています。両者の機能面は同じですが、一部、利用可能なストレージ領域と扱える 1 図面ファイルの大きさが異なります。これは、デスクトップ製品の Subscription 加入の有無とは関係ありません。純粋に AutoCAD 360 だけの契約でストレージ領域と扱える図面サイズが変わってきます。簡単な機能と価格の表がありますので、こちらをご覧ください。
AutoCAD 360 Pro は、Apple iOS 用と Google Android 用の2種類用意されます。それぞれ、Android アプリが こちら、iOS (iPhone、iOS) アプリが こちら からダウンロードすることができます。購入時に Pro または Pro Plus として購入することも出来るほか、無償版の AutoCAD 360 Mobile の中から、Pro にアップグレードすることも出来るようになっています。
AutoCAD 360 Pro は世界共通で一斉に提供が開始されますので、ここではUSドルの表記ですが、日本語表示のストアでは、円に換算されて表示されるはずです。Apple や Google が採用している換算レートは異なるので、今日現在(2013年5月22日)、Apple 側では Pro が月額450円、年額4,300円、Pro Plusが8,500円で、Google 側では Proが月額500円、年額5,000円、Pro Plusが10,000円になっています。Pro 契約はアカウント毎に管理されますので、iOS デバイスと Android デバイスの両方をお持ちの方は、どちらかで契約をして AutoCAD 360 Pro にアップグレードすると、両方で Pro 機能を利用することが出来るようになります。
最後に、AutoCAD 360 は、AutoCAD や AutoCAD LT の代替にはなり得ません。AutoCAD 360 Mobile Pro はモバイルの機動性を活かした機能に特化しています。あくまで、デスクトップ製品と一緒に利用するコラボレーション ツールであることをお忘れなく。
By Toshiaki Isezaki
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